『装丁物語』和田 誠著,中公文庫.#読書備忘録

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本のタイトル: 装丁物語
著者: 和田 誠
出版社: 中公文庫(第3刷)
定価: 840円(税込)

読書家の中には「紙の本派」が一定数存在していて,そういう人たちの多くは「内容も外側も一緒になった相対としての本が好き」と考えている(自分もその中の一人).そんな「紙の本派」の人には,ぜひ『装丁物語』を読んでほしい.星 新一から村上 春樹まで,多くの名著の装丁を手がけた和田 誠が書いた本なので,きっと心の琴線に触れるフレーズに出会えると思う.

『装丁物語』和田 誠著,中公文庫.#読書備忘録

『装丁物語』というタイトルなので,もちろん本を作り上げていく装丁の仕事についてに書かれた本だ.冒頭から最後のページまで,装丁というテーマで18の物語を楽しむことができる.

2つめの見出しの「装丁と装幀」では,「装丁」という言葉についての考え方や用法について詳しく書かれている.

そもそも「そうてい」には,「装丁」「装幀」「装釘」と3つの漢字表記がある.どれも表記としては正しく「書物の形式面の調和美をつくりあげる技術(広辞苑)」といった意味で使われる.また「装丁/装幀/装釘」の使い分けは出版社でも特に定められていないらしく,出版される本によってまちまちだったりするそうだ.

装丁は,装丁とも装幀とも書きます.どれがいちばん正しい,ということも特にないようだし,各出版社でも統一はしていないようですね.ぼくも別段,こだわっていません.何となく気分で,装幀という字を使うことが多かったような気がする.その程度でした.

個人的には「丁」を用いた「装丁」が使われていることが多いと感じるし,文章を書く時も「装丁」を使っている.ちなみに「丁」は「釘」の象形文字だが,製本で釘を使うことは昔も無かったらしい.”紙を合わせて本に仕立てるイメージから「装釘」という漢字があてられたのかもしれません”と,著者は述べている.自分自身もこれまで「装丁/装幀/装釘」の使い分けを意識してこなかったが,「装釘」という字面は確かにしっくりこないと思った.

それに「幀」に抵抗もなかった.深く考えたことはないのですが,もしかしたら,「釘」の字を使うと,何だか本にトンテンカンと釘を打ちつけるような気がしてたのかもしれない.「丁」はシンプルでいいのですが,丁の字は釘の象形文字でしょう.やはりトンテンカンなんですね.釘こそ使わないけれども,紙を合わせて本に仕立てるのは,匠の仕事で,トンテンカン的要素があると昔は考えられていたのでしょうか.

本来「装訂(そうてい)」と書くのが正しいそうだが,パソコンで「そうてい」を変換しても「装訂」が候補に現れることは無い(ATOKとGoogle日本語入力で検証してみた).手元の広辞苑で調べてみると,確かに『本来は,装(よそお)訂(さだ)める意の「装訂」が正しい用字』とはっきり書かれている.

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バーコードが無かった時代の装丁

以前ブログで『バーコードが無かった時代の装丁』という投稿を書いた.タイトルのとおり,バーコードの無かった時代の本の装丁は綺麗だったなぁ,という内容の記事.

この記事の中では「1980年以前に発行されていた本にもバーコードはついていたかも知れない」と曖昧なままにしているが,『装丁物語』の中に「バーコードについて」という章がありバーコードが本に付けられはじめた経緯と体験談がリアルに綴られている.個人的に一番面白いと感じた章だ.

本のバーコードは,雑誌→文庫→単行本といった流れで付けられるになった.導入初期は出版社によってスタンスも異なっていたのだが,やがて「便利だから」という考えに流されあらゆる書籍にバーコードが印字されるようになっていく.著者は,このバーコードの問題に頭を悩ませ導入に反対していた.

おしまいに,現在いちばん悩んでいることをお話しします.バーコードの問題です.
出版関係のバーコードはまず雑誌に,それから文庫につくようになって,やがて単行本にもつけられるようになりました.文庫についた時点で危惧はあったんですが,文庫にはフォーマットがあって,カヴァーの裏には解説的な字句で占められることが多くなり,各デザイナーが手がけるスペースでは無くなっていた.そこにバーコードが入ったので,いわば領海外の出来事だったんですね.

僕も先ほど紹介した記事で「バーコードの無い装幀は,Appleマークしか刻印されないiPhoneのようで美しい」と述べていたので,装丁家の美意識と意見が一致したことを少し嬉しく感じた.もちろん現代の物流を考えるとバーコード無しは難しいだろうが,「帯にだけバーコードを印字する」「シュリンクの上からバーコードを貼る」といった対策を装丁にこだわった本だけにでも行ってほしいと思う(先日買った東松 照明の写真集『太陽の鉛筆』は,シュリンクの上からバーコードが貼られており,装丁がとても綺麗だった).

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<了>

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