バーコードが無かった時代の装丁 #読書備忘録 #バーコード誕生

Photo : SMATU.net

自分が生まれる前に出版された,古い本がいくつか手元にある.これらの装丁を眺めていて,不思議な違和感を抱いた.どちらかといえば,心地よい違和感.最初は理由がわからなかったが,ある日ふと原因に気付いた.

“バーコードが無い”のだ.

バーコード普及以前に出版された書籍には,バーコードが印刷されていない.
装丁がシンプルで美しい.

バーコードの誕生は1940年代後半で,アメリカの学生だったMr.WoodlandとMr.Silverいう人が考案したらしい.日本でも1970年代前半にバーコード技術が検証され始めたのだが,普及には少し時間がかかっている.1984年にセブンイレブンが,全国の店舗で大規模なPOSシステムを導入しことがきっかけとなり,バーコードは全国に拡がっていった.

1948年、Drexel大学の学生であったMr.WoodlandとMr.Silverが、Morse Codeを印刷して垂直に伸ばし、太バーと細バーを作成することを考案した。その後、標的のような多重円形のバーコード(下図)を考案した。そして、翌年、それらを「機器の分類と識別」の特許として申請し、1952年に特許を取得した。そして、1952年には、Mr.Woodland(IBMに在籍)とMr.Silverは、フォトマルチプライア(光電子増倍管)と500Wのランプを使用して初めてのバーコードリーダを開発したが、実用にはならなかった。

引用: バーコードの歴史

1984年、大手コンビニエンスストアのセブンイレブンが、本格的なPOSシステムを導入し、商品納入業者のすべてにソースマーキングすることを求めた。当時、セブンイレブンは、全国に約2000店舗を持っていたので、その影響力は非常に多く、食品雑貨のソースマーキング比率は急速に増加した。これにより百貨店、スーパー、コンビニ、専門店へとPOSシステムが普及していくことになる。

引用: バーコードの歴史

なので,1980年以前に出版されていた本にはバーコードが付いていない.もしかしたら,1980年以前にもバーコード付きの本が製本されているかもしれないが,細かいことは,あまり考えないことにしておこう.

バーコードが無い本の装丁は,現代の書籍と比較するとシンプルで美しい.最近のiPhoneは背面にAppleのロゴだけがデザインされるようになっているが,これに近い美学のようなものを,バーコードが印刷されていない本は纏っているような印象をうける.

バーコードは日本人に多くの利便性をもたらしたが,本の装丁においては景観を損なう結果になってしまったと思う.RFIDタグのような技術がもっと安価に流通し,螺旋階段のように一周まわって進歩したバーコードの無い世界が早く訪れることを願っている.

バーコードの印刷されていない本の背表紙には,リンゴマークしか刻まれていないiPhoneを似た美学を感じる.

編集後記

バーコードの無い世界のことを考えていて,『バーコードバトラー』という玩具のことを思い出した.知らない人がほとんどだろう.『バーコードバトラー』は,製品のバーコードを読み込むと様々パラメータを持ったキャラが自動で生成され,そのキャラ同士を戦わせて遊ぶ玩具だ.

子供たちは,そのバーコードの戦士たちのバトルに興ずる.記憶は曖昧だが,当時はバーコードバトラーを題材にした漫画やゲームもあったような気がする.バーコードが普及した時代ならではのアイデアだと思う.

〈了〉

バーコードバトラーの画像(Wikipediaより転載しています)

SourceNotes

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