形而上学 【読み:けいじじょうがく】【英語表記:metaphysics】

写真に興味を持つようになり,写真関連の本を読んでいると「形而上学」という言葉に出会うだろう.
様々な解釈はあるが,取りあえず「形而上学:物事の本質や存在の根本原理を探究する学問」と定義しておこう.

アリストテレスの著書にも同様のタイトル『形而上学』があり,これが形而上学の起源と考えられているので,気になる人は手に取ってみると良いと思う.

『形而上学(下巻)』アリストテレス著/岩波文庫

最近読んでいる『アナロジーの奇跡 写真の歴史』では,序章から以下のような文脈で形而上学に触れられているし,『複製技術時代における芸術作品』などベンヤミンの著書でも度々「形而上学」が登場する.

また,形而上学は,存在一般を取り扱うことから,経験的または実証的知識の及ばない事柄について論ずる理論を,(非難の意味で)形而上学と呼ぶこともある.
このような形而上学が事柄を一面的にとらえることから,ヘーゲルによって「非弁証法的」な考え方が「形而上学的」と呼ばれた.
その用語法にしたがって,マルクス主義の文献では「形而上学的」という言葉は,もっばら「非弁証法的」という意味で使われている.

このように「形而上学」は,写真史関連の本や哲学書で頻出するワードなので,言葉のイメージをつかんでおくとよいだろう.

私たちはカメラを攻撃的な装置、つまり世界を撃ち=撮影し、捕らえ=画面に収め、再現前させる道具として考えることに慣れてしまっている。たいていのカメラには操作する人間が必要であり、そして機材を持って特定の方向に向け、必要な技術上の調整をし、シャッターボタンを押すのはふつう人間の手なので、私たちはしばしばこの力をみずからの眼差しに転移させる。写真についてのこうした記述が一般的になったことは、近代の形而上学の歴史における新たな一章の始まりを示すものだった。

引用:『アナロジーの奇跡 写真の歴史』カジャ シルヴァーマン著/月曜社
『アナロジーの奇跡 写真の歴史』カジャ シルヴァーマン著/月曜社

【形而上学】けいじじょうがく
1)アリストテレスのいう第一哲学.哲学史,問題集,定義集,実体論,自然神学の5部からなる.
2)現象を超越し,その背後に在るものの真の本質,存在の根本原理,存在そのものを純粋思惟により或いは直観によって探求しようとする学問.神,世界,霊魂などがその主要問題.

引用:広辞苑

形而上学
本来は、存在を存在として取り扱う学問を意味した。それが個々の存在物(感覚的経験の対象)ではなく、それらを超えた「存在一般」を取り扱うことから、経験的・実証的知識の及ばない事柄について論ずる理論を、非難の意味で形而上学とよぶことがある。また、このような形而上学が、事柄を一面的にとらえる傾向があったことから、ヘーゲルによって、「非弁証法的」な考え方が「形而上学的」とよばれた。その用語法にしたがって、マルクス主義の文献では、「形而上学的」という言葉は、もっばら、「非弁証法的」という意味で使われている。すなわち、事物を他の諸事物との連関から切りはなして孤立的にとらえ、また、発展的なものとみないで固定的なものとみなす考え方が、「形而上学的」な考え方とよばれる。

引用:『世界十五大哲学』PHP文庫

<了>