本のタイトル: エクリチュールの零度
著者: ロラン バルト(森本 和夫・林 好雄訳)
出版社: ちくま学芸文庫(第10刷)
定価: 1,100円(税込)
ロラン バルトの著作,『エクリチュールの零度』を読みはじめた際の所感.
『明るい部屋』が面白かったので,バルトの著作も少しづつ開拓していこうと考えている.バルトの書いていることを解るには,サルトル哲学の勉強も必要なので,読み解くのはなかなか難しいと感じている.
また,本の内容とは全く関係ないが,本書は訳注と解説が非常に充実しているのも特徴である.総ページ数が276ページなのに対して,訳注と解説が半分以上を占めている(バルトの文章は118ページまで).「エクリチュール」「アンガージュマン」といった,普段本を読んでいてもあまり登場しない言葉も丁寧に解説してある.
訳注で書かれている,これらの主要な概念から学んでも読書が捗ると思う.
『エクリチュールの零度』を読んでいると,「言葉 = ひとつの概念」だと思えてくる.
フランスの作家や著述家(ここではサルトルやバルトを指す)の本を読んでいると,「表意する」を意味する「シニフィエ」や「標示する」を意味する「シニャレ」,「書くこと」を「エクリチュール」と言い換えたりしているのを目にする.
実際に彼らの書いた本を読むと,文脈上で単に「表現する」や「書くこと」をだけを表現するにとどまらず,それらの言葉が持つ微妙なニュアンスを含めて持論などを読者に伝えようとしていることが解る.
言葉 = ひとつの概念
「シニフィエ」や「エクリチュール」の訳注などを読むと,それらが単なる言葉ではなく,ひとつの概念を形成しているようにも感じる.このような言葉を学ぶことは,自分の中に,新たな価値観や考え方を生み出すことに通じるような印象を抱いた.
サルトル,バルトの書いた本は,1冊通読するのにも苦労するが,引き続き脳みそに汗をかきつつ読み進めようと思う.
〈了〉