「量子コンピュータが人工知能を加速する」(本のタイトル)
- 量子コンピュータ
- 人工知能
という言葉に興味がある人には、大変オススメの書籍なのですが、本書の中で人工知能ブームについても解説されてます。
今回は「量子コンピュータが人工知能を加速する」の内容を元に、現在3度目が訪れている人工知能ブームについて、ご紹介したいと思います。
現在のAIブームは、実は3回目の人工知能ブーム
最近ニュースや新聞など、生活のあらゆるところで「人工知能(AI)」という言葉を耳にするようになりました。
ところで、現在おとずれている人工知能ブーム、実は3回目のブームということをご存知ですか!?
1956年に「人工知能=Artifical Intelligence」という言葉が登場してから現在に至るまで、人工知能の歴史と3回訪れている人工知能ブームついてみていきましょう。
最初の人工知能ブーム:1956年〜1970年頃
世界で初めて人工知能という言葉が使われるようになったのは、1956年ごろと言われています。
米国ニューハンプシャー州にあるダートマス大学での会議に集まった研究者たちが、「Artifical Intelligence」という用語を使いはじめたことがきっかけです。
※Artifical Intelligence(人工知能)の頭文字をとってAI。
その後1960年代〜、最初の人工知能ブームがスタートします。
ある限られたの条件の元では、人間と機械のやりとりが可能になっていきました。
またこの頃の出来事をきっかけに、簡単なパズルや将棋・チェスなどゲームプログラムも試作されるようになりました。
しかし現実世界での問題はとても複雑なため、当時の技術では解決が難しかったようです。
こうして徐々に、最初の人工知能ブームは1970年代になると下火になっていきました。
2度目の人工知能ブーム:1980年〜
1980年頃になると、2度目の人工知能ブームが起こります。
コンピュータに沢山の知識(データ)を与え、専門家が判断するプロセスを人工知能に真似させたところ
医療分野で例えると…患者に複数の質問に答えてもらうことで、コンピュータが医者の代わりに診断するようなシステム(AI)が開発され始めました。
うまくいきそうな分野があるようにも思えたのですが、専門家の持つあらゆる知識を言葉で記述してコンピュータに教え込むことが難しかったことなどから、2度目の人工知能ブームも下火になっていきました。
3度目の人工知能ブーム:現在〜
- スマホの登場やコンピュータの普及といったハード面での進展
- インターネットによる大量のデータ出現
などに裏付けられた、「機会学習」とくに「ディープラーニング(深層学習)」によって、現在3度目の人工知能ブームが訪れています。
現在のブームは、「機械学習」とくに「ディープラーニング」によって花開いたとされています。
入力された情報(=データ)から、プログラム自身が自分で学習することで識別や予測をする能力を身につける機能のこと。
何段階もの層が積み重なった構造の、「ニューラルネットワーク」を利用した機械学習のこと。
この多層構造の複雑さを利用して、巧みに様々な状況を学び取り、人工知能が複雑なタスクを達成できるようになりました。
現在のブームが凄い点は、「人工知能が特定の分野において人間の能力を超えはじめている」ところです。
その象徴ともいえる出来事は、Google傘下のディープマインド社が開発した「アルファ碁」が人類最強といわれる囲碁棋士のイ・セドルに勝ったことでしょう。
(その後の戦いでも、勝ち続けています)
— 稲林 タク @smatu.netの人 (@takg_jp) 2017年6月4日
これまでもチェスや将棋においては、人工知能が人間に勝利することがありました。
しかし、囲碁はチェスや将棋に比べると打てる手数も多く、そのため計算が膨大になります。
そのため、しばらくは人間の方が強いと言われていました。
上記のような理由からアルファ碁とイ・セドル氏の囲碁対決は、「棋士が勝利するだろう」と多くの専門家が予想していました。
しかし結果を見てみると、5番勝負において4勝1敗とアルファ碁が圧勝するという結果でした。
この他にも、「人間の医師よりも人工知能の方が病気の診断を正確に行う」といった成果が増えていることから、現在の人工知能ブームは本物になるのではないか!?と考えられています。
今年の初め、人工知能研究者のセバスチアン・スラン(グーグルで自動運転部門を率いた)とスタンフォード大学の同僚は、がんの可能性がある皮膚の病変を学会が認定した皮膚科専門医と同じくらい正確に診断できる「深層学習」アルゴリズムを実演してみせた。
出典:MITテクノロジーレビューより
ディープラーニングと機械学習について
最後に、人工知能ブーム理解するには
- ディープラーニング
- 機械学習
の理解が重要とも「量子コンピュータが人工知能を加速する」の作者は語っています。
最後に、「ディープラーニング」と「機械学習」について解説したいと思います。
ディープラーニングを利用した画像認識
「ディープラーニングって、そもそもどんなことなのだろう…」
ディープラーニングは日本語で「深層学習」と略されるので、なんとなくは理解できるのですが実際どんな仕組みになっているのかよく分からない人も多いと思います。
ディープラーニングとは、何段階もの層が積み重なった構造の「ニューラルネットワーク」を利用した機械学習のことです。
この多層構造の複雑さを利用して、巧みに様々な状況を学び取り、人工知能が複雑なタスクを達成できるようになりました。
現在コンピュータはディープラーニングを使って、以下のように画像を認識できるように進化しました。
コンピュータに多数の画像データを読み込ませて「これは鳥」「これは猫」という判断をさせるのに、機械学習を利用することができます。
これまでコンピュータは、「鳥には固いくちばしがある」「猫は毛に覆われている」といった、鳥や猫の特徴を人間がコンピュータに教えてあげる必要がありました。
ところが現在の技術では人間が細々とした特徴を教え込まなくても、沢山の画像の例からコンピュータが自ら鳥や猫の特徴を学ぶことができるようになっています。
アルファ碁も同様の手法を応用して強くなった人工知能で、コンピュータ同士が勝手に無数の対局を行なうことで蓄積したデータから独自の戦術を編み出し人間に勝利しました。
2種類の機械学習について理解しよう
ちなみに機械学習には
- 教師あり学習
- 教師なし学習
の2種類があります。
教師あり学習とは、入力されたデータに対してそれが何を表しているかを示す
- 名前
- 属性
- 数値
といった出力が例題やその答えとして、多数システムに与えられるタイプの機械学習のことです。
先生が示してくれた例題と答えを、一生懸命学習するのに似ていることからこう呼ばれます。
反対に教師なし学習では、大量のデータだけが存在し教師による正解の提示は一切ありません。
入力されたデータの特徴などを、機械自らが学び取る必要があります。
前項で紹介した鳥や猫の識別で使われているのは、教師ありの機械学習です。
一方で、画像を見た時に「あの画像とこの画像は似てるなぁ」と感じるように、コンピュータにおいても何らかの基準で似ている似ていないを見分けることも、可能になってきています。
ニューラルネットワークの学習でモノをつかめるようになるロボット
カリフォルニア大学バークレー校の研究者は、既製品の3Dセンサーと標準的なロボット・アームに接続された大規模な深層学習ニューラル・ネットワークに大量の画像を登録した。
新しい物体が3Dセンサーの前に置かれると、ロボットの深層学習システムはすぐさまアームがどのように掴むべきかを判別する。
出典:MITテクノロジーレビューより
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