オリジナルが持つ価値は普遍的で,それに大金をつぎ込んでも良いと考える人は,少なくとも紀元前4世紀くらいから存在していた./『美術の物語』エルンスト H ゴンブリッジ著 #読書備忘録

オリジナルが持つ価値は普遍的で,それに大金をつぎ込んでも良いと考える人は,少なくとも紀元前4世紀くらいから存在していた./『美術の物語』エルンスト H ゴンブリッジ著

こういう時代のこういう空気の中で,裕福な人々が美術品を収集するようになった.彼らは,原作が手に入らない有名作品はコピーを作らせたし,原作が入手可能なものには法外な金をつぎ込んだ.

「ギリシャとその広がり 前4世紀ー後1世紀」111pより

上記は,ゴンブリッチの著書『美術の物語』からの引用.(ゴンブリッチについては,簡単な解説を後述)

オリジナル(絵画などの美術作品,原画,原盤,そのほか複製元となるあらゆるモノ)が持つ価値は普遍的で,それに大金をつぎ込んでも良いと考える人は,少なくとも紀元前4世紀くらいからいたらしい.

最近だとNFT(Non Fungible Token/ノンファンジャブルトークン)が,簡単に複製可能な(オリジナルの)デジタルデータに価値を付加する仕組みとして注目されているが,こういった歴史を鑑みるとその可能性を改めて感じる.

2022年に入って,国産ジェネラティブ市場も盛り上がりを見せているので,日本のデジタルアートの世界が盛り上がることに期待したい.

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ゴンブリッチと『美術の物語』について

エルンスト H ゴンブリッジ著,『美術の物語』の在庫がたまたま立ち寄った書店にあったので,思わず衝動買いしてしまった.カバー(本のではなく保護用ダンボールカバー)に「テレビで紹介された〜」といった記載があったので,それで注目され売れ行きが伸びているのだろう.

手元に実家の本棚から拝借した旧版があるのだが,図版が全てカラーになっていて

,翻訳も読みやすいと感じたのが購入の決め手だった.値段は,およそ9,000円.安い本では無いが,買って後悔していないのでいい本だと思う.

エルンスト H ゴンブリッチは,20世紀最大の美術史家で,1909年ウィーンに生まれ.1939年にイギリスへと拠点を移し,1946年以降は,研究員,講師,さらに教授として,ロンドン大学のウォーバーグ研究所に勤務し,1959年に同研究所の所長となる.その間,ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート,オックスフォード大学,ケンブリッジ大学の客員教授も歴任.さらにイギリスアカデミー会員,古代学協会会員,王立建築家協会会員として活躍しながら,諸外国の学術団体の名誉会長となっている.一言で言えば,「美術史,芸術史にめちゃ詳しい凄い人」.

そんなゴンブリッチの代表作が『The Story of Art』である.

<了>

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