1ヶ月くらい前に,好きな写真家ブレッソンの『アンリ・カルティエ = ブレッソン写真集成』を購入した.とても幸運なことに,新品を買うことができた(この写真集はすでに廃版になっていて,最近はプレミアム価格で流通している).同じくブレッソンの写真集『スクラップブック』もあったので,思わず2冊とも買ってしまった.もちろん後悔は一切していない.
興味本位でAmazonで現在の価格を調べてみたが,中古品でも2万円くらいの値段がついており,少々驚いている(「ほぼ新品」状態で3万円以上の価格になっていた).良い写真集なのだが,正直3万円なら買ってなかったと思う.本当にラッキーだった.
購入してから大切に,4〜5回ほど通読し終えたのだが,ブレッソンの写真からはもちろんのこと,解説文からも学ぶことが多い書籍だと感じている.写真の歴史やブレッソンについて勉強中なので,書かれていることを理解するにはまだまだ知識不足ではあるものの,写真を撮るうえで気づきとなる言葉が随所に散りばめてある.
この記事を読んでいる方は,少なからずブレッソンの写真や,『アンリ・カルティエ = ブレッソン写真集成』について興味を持っている人だと思うので,もし適正な価格で入手できるのであれば,迷わず本書を購入することをおすすめする.この写真集の定価は11,000円(税抜).中古で状態の良いものや,新品を見つけたのであれば,買って後悔はしないと思う.
以下は,『アンリ・カルティエ = ブレッソン写真集成』からの引用(9-15p ジャン = ノエル・ジャヌネーの解説文より).紙質も素晴らしく,プリントされているブレッソンの写真は,有名なものから珍しいカットまで様々.ブレッソンが亡くなったのは2004年で,この写真集成は同年7月に初版が発行されている.まさに,ブレッソンの集大成となる写真集である(こんな本を出版する岩波書店は,やはり流石だと思う).
スナップショットとは何か? 絵画やデッサ員のように人間が手で生むイメージと,光をフィルムに感光させて機械的に作るイメージとの間の過激な断裂.前者が生むのは世界で唯一の作品.後者は複製可能なので,その価値は作品が一つしかないということではなく,作品にとどめられた瞬間が,その一瞬しかないというこにある.ハンターのようにねらい,選び,トリミングし,署名する作者にとって,写真の方が価値が低いということはない.アンリ・カルティエ = ブレッソンは,待ち伏せていた場所から絶好のタイミングで飛び出す.瞬間を捉えるのは直観の成せる技だ.イメージの買得はその後の作業だ.
恐らくこれから何度も何度も見返し,そのたびに何かを感じ,何かを考えることになる本と出会えたと感じている.冒頭の解説文は「見ること,それがすべて」というタイトルが付けてある.iPhoneが登場してから,共感を得るための画像が,文字通り指数関数的に増えている.そんな現代でだからこそ,見る目を養い,良い写真を眺め,それを撮影した人と写真を通じて対話することを楽しみたい.今はそんなことを考えながら『アンリ・カルティエ = ブレッソン写真集成』を読んでいる.
〈了〉