写真史の本『教養としての写真全史』を読んでいて,以下のような文章が目に止まった.今では嘘のような話だけれど,写真技術が日本に入ってきた1860年代当時,日本人は「写真を撮られると,魂が抜き取られる」と考えていたらしい.
日本における写真は幕末期において,長崎,横浜,函館といった開港地から発展をみた.一八六二年に長崎で上野彦馬,横浜で下岡蓮杖が開業.六四年に函館で木津幸吉が,六五年には京都で堀与兵衛が写真館を設けている.
『教養としての写真全史』より引用
〜中略〜
しかし,彼らも開業してしばらくは客が来なかった.「カメラは魂を吸いとる」と噂されるなど,写真への恐れが勝っており,高価でもあったからだ.
当時の文献などを調査したわけでは無いので,どれくらいの人がこのように考えていたのかは解らないけれど,少なからずこんな噂が当時の日本では囁かれていたようだ.どんな時代でも,仕組みや原理の解らないモノに対しては,人は恐れや不信感を抱くのだろう.
これは,新しいテクノロジーや文化に対してもそうで,「クラウドファンディングは詐欺だ」「ビットコインなんて一円の価値もない」と,数年前は多くの人が騒いでいたように記憶している.それが今では,クラウドファンディングは多くのアイデアや企画を具現化し,ビットコインは700万円近くの価値が付いて取り引きされている.
クラウドファンディング 成功率を上げる秘訣: WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)日本版
ビットコイン最高値 底流に投機マネーの再加速: 日経電子版
「人間や大衆の本質は,何百年経っても変わらないのだろう.」そんなことを,写真史から学ぶことができたような気がする.
〈了〉
SourceNotes
- 『教養としての写真全史』鳥原 学著(筑摩書房)
[quads id=3]