『語るピカソ(旧題: ピカソとの対話)』ブラッサイ著,飯島耕一・大岡信訳 #写真についての覚書 #読書備忘録

Photo : SMATU.net

本のタイトル: 語るピカソ(旧題: ピカソとの対話)
著者: ブラッサイ(飯島耕一・大岡信訳訳)
出版社: みすず書房(第9刷)
定価: 8,800円(税込)

『語るピカソ』.

お気に入りの書店のいつもの棚を眺めていると,妙に気になる装丁の本と出会った.橙色のカバーに,《黒いダイヤ》《燠火の眼》などと隠喩されていた眼差しのピカソの顔.中身を少し読むと,写真家ブラッサイが書いたピカソとの対話本であることが解った.

ブラッサイは,『世界を創った100枚の写真』にも登場しているハンガリー生まれの写真家で,『夜のパリ』などパリの人々や街並みを撮った作品が有名である.また,ブラッサイは文才もあり,本書『語るピカソ』以外にも『プルースト/写真』などの名著を多数世に残している.「天は二物を与えず」は彼には通用しないらしい.

ブラッサイは,『夜のパリ』などパリの人々や街並みを撮った作品が有名.

出版社がみすず書房だったので,ある程度高額な書籍であることを覚悟していたが,なんと定価が8,800円(税込).値段を知らずに立ち読みしているときは「買おう」と思っていたが,正直しばらく購入を躊躇してしまった.Amazon・メルカリでは中古本が安く手に入るので,読みたいけど値段で迷っている人は,中古品で状態のよい本を探すのがいいと思う.

みすず書房さんなので高いとは思っていたが.
以前は定価5,000円くらいだったらしいが,値上がりしている.

では,肝心の中身.

ブラッサイの文章は素晴らしく,訳者の力量も相まってなのか,読みやすい文章で綴られている名著だと思う.僕は昭和の終わり頃生まれたので,1930〜1940年頃の時代感は全くわからないが,それでもブラッサイという写真家の眼をとおして語られる「ピカソという人物」と「ピカソを中心とする当時の様子」が絵のように頭に浮かんでくる.

訳者のあとがきを読むと,本書がどのような内容か解るので,実際の本を手に取ることができるなら,あとがきもから読んでみのもいいだろう.

ピカソその人の日常生活とその思想,仕事ぶりが,一流の写真家の目を通して活写されているのみならず,ピカソをめぐる数多くの詩人,画家,小説家,画商,あるいは踊り子,編集者,ピカソの家族,また恋人たちや動物たち等等が,これほど生き生きと興味ぶかく書かれた本は,今までになかったと思う.

『語るピカソ』訳者あとがきより引用

『語るピカソ』では,当時を生きた著名人として,エリュアール,サルトル,ボーヴォワール,カミュ,ヘンリー ミラーなどが登場する.ブラッサイのシュルレアリスム時代の仕事や,シュルレアリスム運動についても書かれているので,本書に登場する人物や,シュルレアリスムに興味がある人にとって勉強になる記述も多い.これも本書の特徴のひとつだと思う.

「ミノトール」誌に掲載されたピカソの彫刻の写真に付けられたテキストは,アンドレ・ブルトンの書いたものだった.ブルトンは第一回の「シュルレアリスム宣言」(一九二四年)発表の少し前に,はじめてピカソと知り合った.「シュルレアリスムがピカソに対してとった行動は」ブルトンとピカソの八十歳の誕生日記念の際に書いている.「つねに,芸術的側面において,大いなる敬意を払うことだった.実際,彼の新たな提言や発見は,一再ならず,彼に対して惹かれるわれわれの気持ちを一層強めたのだった.われわれは《キュビスト》と称される画家たちにほとんど何の関心も持たなかったが,ピカソがわれわれにとって,この一群の例外者だったのは,彼の抒情(リリスム)によっている.このリリスムこそ,きわめて早い時代から,彼自身や当時の彼の仲間によって課された幻覚な諸規範に対して,彼が徹底的に自由に振舞い得た原動力だったのだ」(コンパ紙,一九六一年十一月六日号)

『語るピカソ』36ページより引用

図版写真も50枚以上が添えられているので,それらの写真を見るのも楽しいし,ブラッサイの撮ったピカソのポートレートからは,ピカソの思想や人柄が伝わってくる.また,ピカソは自分の吸った煙草の空箱を捨てず,アトリエに積み重ねるといった,変わったことをしていたらしい.そんな変わった習慣を撮った写真も残っている.

ブラッサイが撮影したピカソのポートレート.
《黒いダイヤ》と呼ばれた眼差しが印象的.

ブラッサイの語るピカソ伝.『語るピカソ(旧題: ピカソとの対話)』は,初版が1968年と50年以上も昔の書籍だが,2021年に新品で手に入れることができたのは,本当にラッキーだったと思う.恐らくこれから何度も読み返す本なので,大切にしていこうと考えている.本書に興味がある人,たまたま書店で手にした人は,ぜひとも購入を検討してみてほしい.

〈了〉

希少本に分類されるであろ『語るピカソ』.
新品や状態のよい本に出会えたら,前向きに購入を検討してよいだろう.

SourceNotes

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