ダゲレオタイプ(銀板写真)とは何か.
ダゲレオタイプ(銀板写真)とは,およそ180年前に公表された世界初の実用的な写真技法のこと.フィルムや紙ではなく,磨き上げた銀の板(銀板)に写す写真のことを言う.
ダゲレオタイプは,フランス人にルイ ジャック マンデ ダゲールらによって発明された.初期のプロセスでは,以下のものが用いられていた.
- カメラ
- 銀の板
- ヨウ素結晶
- 水銀
- 塩
- 火と水
ダゲレオタイプの特徴は,圧倒的な解像感を持つ複製不可能な1点物の写真であること.ダゲレオタイプを専門に扱う写真家さんを「ダゲレオタイピスト」と呼んだりもする.
ダゲレオタイプ 制作プロセス
ダゲレオタイプは,以下のように大きく4つのプロセスで制作される.
- 銀板を磨く
- 感光化処理
- 銀板を取り付け撮影
- 水銀の蒸気で現像処理
ステップ1: 銀板を磨く
最初のプロセスは銀板を磨く.鹿の皮銀板を磨きピカピカの状態に仕上げる.手のひらサイズ程度の銀板を磨くのに約40分ほど,大判カメラ用の大きなサイズの銀板となると2時間くらいかけて磨く場合もある.
ステップ2: 感光化処理
銀板を磨き終えたら,これを感光化させるための作業に入る.専用ボックスを使い,ヨウ素と臭素を使って作業を行う.この工程からは,撮影をするとき以外は光の入らない暗室で作業を行う.
ステップ3: 銀板を取り付け撮影
感光化の処理が終わると,銀板をカメラに取り付ける.ダゲレオタイプでは,この銀板がそのまま写真になる.その場の光量にもようるが,撮影は基本的に長時間露光(シャッターを長くシャッターを開けて撮影)となる.
ステップ4: 水銀の蒸気で現像処理
ダゲレオタイプでは,撮影後すぐに現像処理に入る.専用のボックスに水銀を入れて,その上部に銀板を設置.アルコールランプで熱して水銀を蒸発させ現像する.(ここで像が浮かび上がってくる)その後,定着液で像を定着させ,水で洗い,乾かしたら写真が完成する.銀板写真は空気に弱いため,ガラスで密閉し,指などで擦らないようにする.(触ってしまうと像が消えるので,絶対に触れないこと)ダゲレオタイプは,空気が入らなければ170年ほど保存できるとされている.
ダゲレオタイプは,ポートレートが多かった
ダゲレオタイプの全盛時代,その被写体の多くはポートレートだったと言われている.理由は,ダゲレオタイプで撮った写真をアクセサリ(ペンダントなど)にして,形見として身につけていたから.ダゲレオタイプの写真は,モニュメント(記念品)のようにして扱われていたということ.
いつか,ダゲレオタイプの現像にチャレンジしてみたい.
〈了〉
SourceNotes
- Phat PHOTO ファットフォト2014年 1-2月号