シャーロック ホームズ短編集の2作目が,今回紹介する『シャーロック ホームズの思い出』.ちなみに,英題は『The Memoirs of Sherlock Holmes』で,原著が発行されたのは1894年.実に100年以上昔である.
このように,100年以上も読み続けられる(しかも世界中で)作品を生み出したコナン ドイル.もし現代に蘇ったら,作家冥利につきると感じることでしょう.
さて.
今回はサクッと『シャーロック ホームズの思い出』がおすすめなポイントをまとめておきます.本書に収録されている話の数は11作品(新潮文庫版は10作品).各物語のネタバレは書いていませんので,ご安心して最後まで読んでください.
『シャーロック ホームズの思い出』をおすすめする理由
結論から言うと.この短編集にはホームズの転機となる事件が,2つ収録されているから,という理由でおすすめです.
1つは「グロリア・スコット号事件」,もう1つが「マスグレーヴ家の儀式」.前者は,シャーロック ホームズが,探偵としてはじめて仕事をした事件.後者は,探偵を生涯の仕事にしようと,考えるきっかけになった事件.
この2つは,シャーロック ホームズのファンである『シャーロキアン』の方々も珍重している物語.そんな物語が収録されている本短編集は,シャーロック ホームズに興味がある人であれば,購入して後悔は無いでしょう.
とにかく『シャーロック ホームズの思い出』は,この2つを読むだけでも買う価値あり.個人的には,短編集にしてはやや長めの話である『海軍条約文書事件』や,同じくホームズにとって重要な『最後の事件』も忘れず呼んで欲しい.『最後の事件』には,ホームズの宿敵と呼ばれるモリアティ教授も登場する.ホームズ好きであれば,おさえておきたい話.
シャーロック ホームズ作品は,発行年順に読むと良い.
なお,ここで紹介した『シャーロック ホームズの思い出』だけでなく,すべての物語を読みたいと考えている人には,できるだけ原著が発行された順でホームズの活躍を楽しむことを強くおすすめする.
ホームズの性格などは1作目の『緋色の研究』で細かく解説されているし,ホームズと相棒であるワトソンの関係性の変化も,発行順に読むことでより楽しむことができる.弊ブログの別記事でも紹介しているが,シャーロック ホームズ作品の読むべき順番は以下のとおり.これからホームズ物語に触れる人の参考になれれば幸いです.
- 緋色の研究
- 四つの署名
- シャーロック ホームズの冒険
- シャーロック ホームズの思い出
- バスカヴィル家の犬
- シャーロック ホームズの帰還
- 恐怖の谷
- シャーロック ホームズ最後の挨拶
- シャーロック ホームズの事件簿
- 新潮文庫版は『シャーロック ホームズの叡智』が最後にくる
ちなみにどの出版社を読むかで悩んだら,少々読みづらさがあることを覚悟したうえで,延原 謙さんが翻訳した『新潮文庫版』にしましょう.ホームズ作品が発行された,1800年後半から1900年代初め頃の雰囲気を感じつつ,当時の世界観を翻訳された文章を通じで堪能できます.そして,延原 謙さんの書いた解説も非常に面白い.
ということで,1人でも多くの人にシャーロック ホームズに触れていただくことを願いつつ,終わりにしたいと思います.700円ちょっとで楽しめるエンターテイメント.探偵小説の古典であるシャーロックホームズは,とてもお得な買い物であります.
〈了〉
SourceNotes
- 『シャーロック・ホームズの思い出』(新潮文庫版)の解説より