【ブックレビュー】『偉人たちのあんまりな死に方』は、壮絶すぎる偉人たちの最後を綴った恐怖の医学史

『偉人たちのあんまりな死に方』の冒頭は、この様な一文からはじまります。

※警告
血なまぐさい話が苦手なら、この本を読んではいけない。

タイトルからも分かる通り『偉人たちのあんまりな死に方』には、歴史に名を残した人物がどうやって最後を迎えたのか?が書かれています。
しかも…、結構具体的に。

本に出てくる人物は総勢19名。
それぞれ、代名詞とも呼ばれる功績や著書があります。

  • コロンブス…アメリカ大陸発見
  • ダーウィン…種の起源
  • ガリレオ…地動説

しかし、それらの人物が具体的にどうやって亡くなったか?を知っている人は、少ないのでのは無いでしょうか!?

例えばコロンブス。
コロンブスは航海で身体がボロボロになり、最後は関節炎で背中が曲がり、手の指はカギ爪の用に変形し、修道士の介抱を受けながら54歳で亡くなりました。

偉人の功績を書いた本は多数ありますが、その最後を描いた本にはこれまで出会ったことがありません。
そんなちょっと視点を変えた偉人伝が、この『偉人たちのあんまりな死に方』なのです。


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そこまでしなくても…ベートーヴェンの最後

Postage stamp Cyprus 2011 Ludwig van Beethoven (1770-1827)/PHOTO: iStock by Getty Images

↑で紹介したコロンブスは、他の偉人達と比べると意外とソフト方の最後です。

一番印象深かったのは、ベートーヴェンの最後。
ベートーヴェンは、肺炎が原因で身体に余分な水が溜まる水腫になります。

彼の生きた1800年台の医学は中世の頃と対して変わらないので、医者たちはベートーヴェンの腹に穴をあけ、そこに管を差し込み溜まった液体を抜き出そうとします。

当時は、麻酔はおろか鎮痛剤もありません…。
意識のハッキリした状態で、この治療を数回受けます。
その痛みは想像を絶するもの…。

もちろん回復するはずもなく、主治医は別の治療を施します。
溜まった水を体外に排出させるために、今度はベートーヴェンを蒸し風呂に入れます。
しかしそれも逆効果…彼の身体は治療前よりさらに膨らみパンパンになってしまいます。

こうして1827年3月26日に、ベートーヴェンは亡くなります。

登場するのは、誰もが知る19人の偉人たち

Little girl genius working on a mathematical equation/
PHOTO: iStock by Getty Images

この本には、19人の偉人たちの最後が記されています。
一人でも興味があれば、ぜひ読んでみることをオススメします。

ひとつのエピソードは、10ページ前後なので気になる偉人から読んでいくとよいと思います。

ぼくはアインシュタインが大好きなので、彼のエピソードから読みました。
(あまり関心の無かったポカホンタスなどは、2回め読み返す時にやっと目を通しました)

アインシュタインは、死後に脳が取り除かれ保管されていることは有名ですが、どのような経緯でそうなったかについては深くは知りませんでした。

1955年4月18日。
アインシュタインは76歳で亡くなり、病理医のトマス・ハーヴィーによって検死解剖が行われました。

検死解剖そのものが必要ありませんでしたが、ハーヴィーは死因を確認した後、天才の脳を取り出し重さを量ります。
「アインシュタインの脳が、他の人より重たかった」ということを確認しようとしたのです。

しかし、アインシュタインの脳の重さは約1.2キロ。
平均的な脳より、やや軽かったとされています。
(「そんな馬鹿な!」とハーヴィーは思ったことでしょう)

こうしてアインシュタインの脳は取り出され、ホルマリン漬けにされました。

本書に登場する19人の偉人たち

  1. ツタンカーメン
  2. ユリウス・カエサル
  3. クレオパトラ
  4. クリストファー・コロンブス
  5. ヘンリー八世
  6. エリザベス一世
  7. ポカホンタス
  8. ガリレオ・ガリレイ
  9. ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
  10. マリー・アントワネット
  11. ジョージ・ワシントン
  12. ナポレオン・ボナパルト
  13. ルードリッヒ・ヴァン・ベートーヴェン
  14. エドガー・アラン・ポー
  15. チャールズ・ディケンズ
  16. ジェームズ・A・ガーフィールド
  17. チャールズ・ダーウィン
  18. マリー・キュリー
  19. アルベルト・アインシュタイン
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本書のもう一つの側面は「恐怖の医学史」

Professional doctor holding tablet/PHOTO: iStock by Getty Images

そして本書を面白くするもう一つの側面は、この本が「恐怖の医学史」について語られている点です。

加えて興味深いところは、本書がさながら「恐怖の医学史」の様相を呈している点だ。病気の症状自体よりもはるかに過酷なのが、施された医療である。どれもその時代としては「最善の治療法」だったとはいえ、なにもしないほうが助かっただろうといいたくなるものばかりで、気の毒なことこの上ない。

引用:訳者あとがきより

ベートーヴェンの項で触れましたが、当時最善とされていた治療は素人が見ても目を覆いたくなるものばかり。
何もしない方が、痛くもなく長生きできたのではないか…と思います。

その悲惨さは、ジョージ・ワシントンの章にある「もう構わないでくれ。静かに逝かせてほしい。長くはないから」という彼の言葉が物語っています。

本当に気の毒なことこの上ないのですが、同時に麻酔や救急車がある現代に生きていることに、しみじみと「いい時代に生まれたなぁ」と感じてしまいます。

『偉人たちのあんまりな死に方』は、2014年に発売された『偉人は死ぬのも楽じゃない』の文庫版です。
改題して文庫化されているだけなので、カバンにも入れやすくしかも経済的。

『偉人は死ぬのも楽じゃない』が気になっていた人にとっても、絶好の読むチャンスだと思います。

SourceNote

ジョージア ブラッグ
河出書房新社
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