本のタイトル: 芸術家たちの肖像
著者: ロベール ドアノー(堀内 花子訳)
出版社: 岩波書店(第1刷 2010年1月22日発行)
定価: 6,400円(+税)
『不完全なレンズで 回想と肖像』というロベール ドアノーの本を読んでから,彼の作品をもっと見たくなったので『芸術家たちの肖像 ロベール ドアノー写真集』を購入した.6,600円する写真集だが,収録されている写真は180点以上と多く,プリントも綺麗で解説も充実している.大きくて重たいのが難点ではあるが,これは写真の見やすさとトレードオフなので仕方が無い.
現在,定価で流通しているドアノー写真集の中でおすすめの一冊なので,気になっている人は早めに入手しておいた方がよいだろう.というのも,本書が発行されたのは10年以上前で,僕の手元の届いた本も当時刷られた初版.今後重版がかかる可能性も低いので(大概の写真集は1回刷って終わりというのも多いらしい)価格が高騰する前に…というのが理由だ.
『芸術家たちの肖像』というタイトルからも解るように,ほとんどがドアノーの撮ったポートレイト作品.「ポートレイトを撮るぞ」と構えて撮った写真ではなく,被写体との会話の中で自然に撮影されたような雰囲気のものが多いのが特徴だと感じた.
僕は,アンリ・カルティエ=ブレッソンのポートレイトも好きで1冊写真集を持っているが,ブレッソノンが撮るポートレイトの雰囲気とも似ていると思う.芸術家たちの持つ価値観や人間性,そんなものが写真の奥から伝わってくる作品ばかりなので,ポートレイトや働く人々を撮っている方はとくに参考になるはず.
「働く人々を撮る人の参考になる」と書いたのは,鉄を溶接して作品を作っているセザールの写真が「芸術家のポートレイト」というよりは「工場で働く熟練工」といった印象を受けたから.20世紀に活躍した芸術家や彫刻家を中心にした作品集なので,20世紀のアート作品に興味がある人は特に学びのある本になるだろう.
このほどもちあがった計画は,1937年から91年にかけて多くの画家や彫刻家が父を招き入れてくれアトリエを,父にならって探訪してみようというものでした.
旅を終えたいま,まるで時間の流れなど存在しないかのような感覚にとらわれます.ある一つの時代がのこした足跡とも呼べるこれらの写真.わたしたちの試みに闊達にこたえてくれたこれらの写真に感謝します.フランシール ドルディーユの序文より引用