iPhone用コントローラーに感じるアフォーダンスについて.#写真についての覚書

Photo : SMATU.net

先日,スマホ用のゲームコントローラーを購入した.『RAZER KISHI for iPhone』という,Lightningコネクタに直接接続するタイプのコントローラーだ.iPhoneを両側から挟み込むような使い方で,任天堂Switchで遊ぶように寝転がっても快適にプレイできるため,とても気に入っている.

このコントローラーを購入してから,それまでとは桁外れにiPhoneでゲームをするようになってしまった.どれくらい遊んでいるかを簡単に記載しておくが,正直自分でも呆れるくらい,最近はゲームをしまっくているようだ.

  • 11月21日(日)6時間58分
  • 11月20日(土)8時間32分
  • 11月19日(金)2時間11分
  • 11月18日(木)39分
  • 11月17日(水)38分
  • ※11月14〜16日は忙しくゲームはお休み
  • 11月13日(土)2時間30分
  • 11月12日(金)3時間35分 ※この日にコントローラーを購入

さて本題.

『RAZER KISHI for iPhone』を購入したのは,Don’t Starve(ドントスターブ)を久しぶりにプレイしたくなったからというのがキッカケだったが,Don’t Starveのゲーム熱が落ち着いてからも「iPhoneでゲームをプレイしたくなる衝動」のようなものが残っており,ついつい暇を見つけてはゲームを検索している.

ケーム探しはAppStoreだけでなく,Apple ARCADEに加入しているので,そこからも探したり(オーシャンホーン2が面白い),過去にセールなどで購入していたゲームを再インストールして遊んだりしている.コントローラーを買ってからというもの,どうもこの「iPhoneでゲームしたい衝動」が収まらない.最近スマホゲームからは,めっきり遠のいていたのに何故だろう.

キッカケは『Don’t Starve』だったが,このゲーム熱が冷めてからもゲームをしたい衝動が収まらない.
最近スマホゲームからは,めっきり遠のいていたのになぜだろう.

そこで頭によぎったのが,この「iPhoneでゲームしたい衝動」はゲームコントローラーによるアフォーダンスなのではないか??という考えだ.

「アフォーダンス」という言葉は聞き慣れないと思うが,そもそもこの言葉はアメリカの知覚心理学者のジェームズ・ギブソンという人がつくった造語である.英語の「Afford(「〜を与える」などの意)」に接尾語「ance」を加えて名詞,形容詞化してある.

アフォーダンス関連の書籍やアフォーダンスが紹介されている本から,関連する箇所を一部引用してみよう.まずは1冊目『新版 アフォーダンス(佐々木 正人著,岩波書店)』では,アフォーダンスについて以下のように書かれている.

アフォーダンス
アフォーダンス(Affordance)は,英語の動詞アフォード(afford)を名詞化したギブソンの造語である.動詞アフォードを辞書で引くと,例文として Cows afford milk(メス牛はミルクを与える)とか Music affords pleasure(音楽は喜びを与える)などがある.アフォーダンスは「環境が動物に与え提供している意味や価値である.よいものでも(食物や住まいのように),わるいものでも(毒や落とし穴)のように),環境が動物のために備えているのがアフォーダンスである.ギブソンは,環境が空気,物質,そして面の3種から構成されているとした.これらのどれもが,アフォーダンスである.

『新版 アフォーダンス(佐々木 正人著,岩波書店)』より引用
『新版 アフォーダンス(佐々木 正人著,岩波書店)』

ここだけ読んでもよく解らないと思うので,続いては『ふつう(深澤 直人著,D&DEPARTMENT PROJECT)』でアフォーダンスに書かれている箇所を引用しておく.こちらも併せて読むと,アフォーダンスという造語の意味が少し理解できると思う.

自分なりに理解するとアフォーダンスとは,環境が人に提供する価値のことで,その価値は無限であり,人がその価値を途切れずに見いだし続けることを「行為」と定義するのではないかということだ.例えばテーブルに手をついて「よいしょ」と立ち上がるときのその手をつく位置がその状況において見いだされた,あるいはテーブルのその厳密な位置が提供した価値であるということである.その状況にが一般的であればあるほどその価値,つまり手をつく位置は似てくるということで,それを別の言い方で「ふつう」ともいうのではないかと思う.

『ふつう(深澤 直人著,D&DEPARTMENT PROJECT)』より引用
『ふつう(深澤 直人著,D&DEPARTMENT PROJECT)』

また,美術を教えていた父からは「例えば,そこに腰掛けるにちょうどいいサイズと高さの切り株があるとして,それを見た人が『ちょっと座ろう』ということになる,これがアフォーダンスの概念だよ」と習ったことがある.この時は,アフォーダンスに対して全くの知識ゼロ状態だったので,きっと父は平たくシンプルに教えてくれたんだと思う.

例えば,そこに腰掛けるにちょうどいいサイズと高さの切り株があるとして,
それを見た人が「ちょっと座ろう」ということになる,これがアフォーダンスの概念だよ.

美術家だった父の言葉.

このように,「モノまたは環境が人に及ぼす,影響や価値がアフォーダンス」だと考えることができる.このような理解も,ひとつのアフォーダンスの解釈と言ってよいだろう.

いくらゲームのUI(ユーザインタフェース)がスマートフォン用に作られているとはいえ,もともとスマホ用に開発されたスワイプやフリックなどの直感的な動きは,ゲームの操作性を満足させるものでは無い.なので,スマホゲームだけではアフォーダンスが弱い(ここではソフトウェアだけではという意味).やはり,ゲームをプレイするにはコントローラーなのである.

任天堂からファミリーコンピュータが発売されたのは1983年7月15日.今から40年ほど昔だ.この前後から急速に進歩して,そして現在に至るコントローラーの形状/フォルムは,人間にゲームをプレイさせたくさせてしまう効果を隠し持っているのではないだろうか.そんなことを,iPhone用のコントローラーを眺めながら考えていた.

iPhone用コントローラーに,アフォーダンスを感じた週末だった.

〈了〉

iPhone用コントローラーに,アフォーダンスを感じた週末だった.

SourceNotes

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