「父のお見舞いに」と届けくれた
アルテリという本が手元にある
父が亡くなって病院で身の回りのものをまとめたとき
届けてくれた本人に返却し忘れ
そのもまま持ち帰ってしまった本(あしからず)
ふと中身をパラパラめくりながら
犬を送る
という見出しが目にとまり最後の数行を読んだ
生前父が
「その人がその時にしか書けない文章がある」
というようなことを話していた時の情景が
瞬時に自分の中を駆け巡っていった
(視覚、聴覚、触覚のイメージが蘇った)
人間が生きていくなかで
その時その瞬間の感覚感性に任せ
書いたり撮ったりする
それはとてもとても大切なことなのかもしれない
そんなふうに考えていた夏の日.
〈了〉