デジタル機器に情報を保存することで,脳がものを覚えなくなる現象を「デジタル性健忘」と言います.
デジタル性健忘は「Google効果(グーグル効果)」とも呼ばれます.
グーグル効果(デジタル性健忘)
検索サイトの調べ物など,デジタルデバイスに保存された情報については,「別の場所で保管されているから」と脳が自分では覚えようとしない現象.
デジタル性健忘 / Google効果(グーグル効果)とは何か
「デジタル性健忘」は,セキュリティソフトで有名な Kaspersky Lab(カスペルスキー)が命名しました.
Kaspersky Labでは,2015年からデジタルデバイスへの依存が記憶に与える影響について調査しています.
ここで「デジタル性健忘」という用語が誕生しました.比較的,歴史のある言葉です.
デジタル健忘症とは、スマートフォンなどデジタルデバイスに情報を保存したことで安心してしまい、その情報を忘れてしまう現象のことで、Kaspersky Labが命名した。
「デジタル健忘症」の傾向は日本でも–カスペルスキーより引用
デジタル性健忘の事例には,以下のようなものがあります.
似たような経験をしたことがある人も,多いと思います.
- スマホに登録した電話番号を覚えていない
- 実家または配偶者といった,親しい人の番号も思い出せない
- Google検索ですぐ分かる特定の用語など,なかなか覚えられず何度もググってしまう
- メモやタスクアプリに慣れてしまい,簡単な買い物リストが記憶できない
デジタル性健忘を防ぐ8つの習慣
デジタル性健忘は,電子機器に記憶を依存することや,集中力が続かない環境が慢性化することが要因です.
- 電子機器に記憶を依存しており,ものを覚えようとしない
- 集中力が続かない環境が慢性化している(マルチタスクが習慣化)
スマートフォン,タブレット,パソコン.そしてクラウドやメモツール.
これらを使うと便利に情報を保存し,容易にアクセスできるのは事実です.
しかし,電子機器やクラウドにメモをとると,メモの内容そのものではなく,どの情報をどこに保存したのかを覚えることに脳がパワーを使います.
また,集中力がない状態で情報収集や勉強を行っても,そもそも内容が記憶に定着しません.
「集中力がない状態 ≒ マルチタスク」と言っても過言ではないので,マルチタスクの習慣そのものを避けるようにする必要があります.
そのため,以下を意識すればデジタル性健忘の要因から距離をとることができ,デジタル性健忘を防ぐことができると考えます.
集中力を高めるための4つの習慣
新しい長期記憶をつくることを,専門用語で「固定化」と呼びます.
そして,情報は以下の流れで脳に固定化されます.
集中する > 記憶する > 記憶したことを思い出す > 何度か繰り返す > 固定化される
この流れを妨げないためには,集中できる環境をつくり,適切なタイミングで情報をアウトプットすることが大切です.
- 集中するときはスマホを遠ざける
- 電子機器の通知をなるべくオフに設定しておく
- マルチタスクを極力行わない
- あらかじめ時間を決めて作業にとりかかる
スマホが近くにあるだけで,集中力が低下することが研究で実証されています.
そのため,何か覚えたいときや勉強するときはスマホを別の部屋に置くなどして,物理的な距離をとることが効果的です.
とはいえ,スマホを使って勉強したり調べものをする人が大半でしょう.
その場合は,スマホの設定をひと工夫しておく必要があります.
まず,スマホ/タブレット/パソコンの通知は,極力オフにして作業中に集中力が途切れないようにします.
僕の場合,常にスマホの通知はオフにしています.
こうしておくことで,集中力が通知で遮られることがなくなります.
また,マルチタスクは集中を妨げる最たるもの.
「使わないアプリは切る」「勉強に必要ないタブは閉じる」のように不要な情報はシャットダウンし,意識が他へ向かわないようにしましょう.
あらかじめ時間を決めてから作業にとりかかるという,効果的な方法もあります.
例えば「本を読もう」と思って読み始めるのではなく,「30分間は絶対に本を読み続ける」と決めてから読書をスタートします.
そして,30分経つまでは何があっても読書を続けるのです.
こうすることで,集中状態がつくりやすくなります.
もちろんタイマーがなっても自然に読み続けることができれば,タイマーを止めてそのまま読書を続けます.
Apple Watch を持っていれば,手軽に30分タイマーをセットできるのでお勧めです.
記憶に定着させる4つの習慣
- 覚えた情報は一定期間ごとにアウトプットする
- メモの方法を手書きに変える
- スマホやタブレットで読書しない(紙の本 / Kindle 推奨)
- よく寝る
例えば,読んだ本の内容を効率よく覚える場合,定期的に内容を復習したりアウトプットをすることが効果的とされています.
読書や情報収集の習慣が身についている人ほど,本の内容や得た情報を人に話したりブログでまとめておくことが大切です.
メモにおいても,手書きメモの方がパソコンでとるテキストメモよりも勝ることが分かっています.
ある研究で TED トークを視聴させ,一部の学生には紙とペン,残りの学生ではパソコンでノートをとらせました.
結果,紙に書いた学生の方がパソコンでノートをとった学生より,講義内容をよく理解していたそうです.
「ペンはキーボードより強し」ということです.
デジタルメモが習慣になっている人も,手書きのメモを試してもよいかもしれません.
手書きメモ利点として,タイピングほど入力が早くないため,何をメモするか優先順位付けすることで内容を吸収しやすくなる点もあります.
最後に睡眠.
『睡眠こそが最強の解決策である』という本があるくらい,睡眠時間は重要です.
特に記憶の定着には睡眠が必要なので,学んだことを脳に長期記憶として定着させたい人は,必ず十分な睡眠を確保してください.
就寝直前までスマホを触っている場合も,注意が必要です.
睡眠前の情報収集は極力紙の本で行い,どうしても電子書籍がいい人は Kindle Paperwhite を使いましょう.
また,学習した後に10分ほど何もしない方が記憶に定着するという研究もあります.
脳は,詰め込み教育には向いていません.
なにか学んだら10分間時間を空ける,なにかを勉強したらしっかり寝る.
これを徹底しましょう.
デジタル性健忘チェックテスト Kaspersky
カスペルスキーサイトには,『デジタル性健忘チェックテスト』のページがあります.
「デジタル性健忘の傾向があるのだろうか??」と気になる人は,簡単なテストなので受けてみるとよいでしょう.
Kaspersky Lab: デジタル性健忘チェックテスト
https://blog.kaspersky.co.jp/digital-amnesia/
デジタル性健忘 にならないために,デジタルをバランス良く生活に取り入れる
「注意残余(ちゅういざんよ)」という言葉があります.
脳には,切り替えのための時間が必要です.
さっきまでやっていた作業に意識が残っていて,現在の作業に集中しきれていない状態,これが注意残余です.
数秒 SNS をチェックしただけでも,もとの作業にまた集中するには数分かかることもあります.
これは大きな時間の無駄.
集中する > 脳が「大事なこと」だと認識
つまり記憶したい事柄に,積極的に注意を向ける必要がある.ということ.
自分は集中して効率よくマルチタスクしているつもりでも,本当は脳が集中できておらず作業効率が悪いのが一般的です.
実際に「スーパーマルチタスカー」と呼ばれる人たちは存在します.
しかし,人口の1〜2%と考えられており,「自分はマルチタスクができる」と勘違いしている人がほとんどです.
人間はそもそもマルチタスクが苦手.
なのでスマホやパソコンなどの電子機器,クラウドサービスやメモアプリの利点.
これらをきちんと理解したうえで,バランス良くデジタルを生活の中に取り入れるよう意識を続けましょう.
〈了〉
SourceNotes
- スマホ脳(Amazonアソシエイトを利用してます)
https://amzn.to/3omWtLk - NewsPicks
https://newspicks.com/news/5556584/body/?ref=index - 「デジタル性健忘」チェックテスト
https://blog.kaspersky.co.jp/digital-amnesia/ - 調査: 「デジタル健忘症」の傾向は日本でも–カスペルスキー
https://japan.zdnet.com/article/35092981/
デジタル性健忘 = グーグル効果