AF-S NIKKOR 58mm F/1.4Gは,ニコンのラインナップにおいて「三次元ハイファイ」と呼ばれる特性を持ったユニークな単焦点レンズ.購入初日のファーストインプレッションでは,f/5.6とf/2.8を中心に撮影していたので,今回は「他の50mmクラスのレンズとは一線を画す描写をする」と言われている開放F値1.4で撮影してみました.
三次元ハイファイとは?
三次元の被写体を、写真という二次元のフィールドに、より自然な三次元の像として再現するという、AF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gで追求した「三次元的ハイファイ(高再現性)」の設計思想を継承しています。「三次元的ハイファイなレンズ」では、単にピントが合っている部分の解像力やコントラストを引き上げるだけではなく、ピントが合っているところから、ぼけかけたところ、完全にぼけたところまでの連続性を重視し、立体感の向上を図っています。ピントの合った瞳から目じりの皺、そして髪の毛へと遠ざかるにつれてボケがなだらかに変化し、自然な奥行き感のある描写を可能にしています。この緻密に計算されたボケ味で、画面に心地よい空気感をもたせ、人物や静物の佇まいを魅力的に表現できます。
このレンズの特徴のひとつは,その独特なボケの描写力.Noctレンズにインスピレーションを受けて設計されているため,背景のボケは滑らかで,被写体が際立つような美しい立体感を生み出します(開放付近では,特に柔らかく溶けるようなボケが得られると言われている)また,点光源の表現にもこだわりがあり,夜景やイルミネーションなどの撮影時に自然で美しい光のにじみを描き出すとされています.
AF-S NIKKOR 58mm F/1.4Gは,高い光学性能を実現するために特殊低分散(ED)レンズと非球面レンズを採用し,色収差や歪みを抑えています.これにより,クリアで高解像度な描写を可能にし,開放からシャープな画像が得られます.一方で,「1.シャープさだけでなくフレアやゴーストを抑えつつも」「2.あえて少しの光の柔らかさを残した描写が写真に深みと雰囲気をもたらす」ので,この絶妙なバランスが他の標準レンズにはない味わいを与えてくれます.(参照:EDレンズとノーマルレンズの比較)
58mmという焦点距離は一般的な50mmと比べてほんの少し長く,それが自然なパースペクティブを保ちながら,被写体をより強調する役割を果たします.この微妙な違いがポートレートやスナップ撮影で独特な立体感と存在感を与えてくれるの,撮影する人にとって特別なレンズとなっているような気がします(購入前に散々ネットのレビュー記事を読みましたが,長く愛用している人,一度売ったが買い戻している人が多い).
AF-S NIKKOR 58mm F/1.4Gは,ただシャープなだけのレンズにはない「写真に詩的な質感」を加えることができる特別な一本なのかもしれません.使いこなすのには経験と腕が必要ですが,面白いレンズなので僕も末永く付き合っていこうと考えています.
<了>