『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』は、抱腹絶倒のサイエンスエッセイである。

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「読書をしていて、思わず吹きだしてしまった」

最近そんな経験をした人は、どれくらいいるのだろうか。
筆者の場合、ここ数年の読書を振り返っても、本が面白くて笑ってしまったという体験は思い出すことができない。

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』は、紛れもなく鳥類と鳥類学者について書かれたサイエンス本である。
しかし、その内容の素晴らしもさることながら、ユーモアのセンス満載の文章にもただ脱帽するばかり。

その日は、本を仕事帰りのジュンク堂書店で購入し、颯爽とバスに乗り込み帰路に着く。
読書好きをアピールするため、もちろんいつも通り本にカバーは付けない。

どんな本なのかを楽しみにしながら読み進めていくと、これが爆笑必至のサイエンスエッセイ本なのである。
なんとか笑いを噛み殺し読んでいたが、途中我慢ができず思わず「プッと」吹き出してしまった。
本の表紙は、この上なくカラーでポップなデザイン、そしてタイトルには「鳥類学…」。
このまま読み続けてしまえば、社内の人達からは奇人変人扱いである。

柄にもなく周りの目を気にしてしまい、泣く泣く本を閉じる。
そしてもちろん、残りは帰って一気に読み終えてしまった。




鳥のことは好きですか??

Woman praying and free bird enjoying nature on sunset background, hope concept

Woman praying and free bird enjoying nature on sunset background, hope concept/
PHOTO: iStock by Getty Images

正直なところ筆者はこの本を、鳥に対してネガティブなイメージを持っていないすべての人に読んでもらいたいと思っている。

日本鳥学会の会員数は約1200人。『日本タレント名鑑』に載っているタレントまたはモデルの数が1万1千人。学会員が全員鳥類学者だとしても、タレントより希少なのだ。日本の人口を1億2千万人とすると、10万人に1人。つまり、10万人友だちを作らないと鳥類学者とは仲良くなれないのである。

鳥類学者とは、それほど貴重な存在なのだ。
Facebookで友だちが1万人いることを自慢する人であっても、その中に鳥類学者がいる確率はかなり低いことであろう。
そんな鳥類学者の貴重な体験を、ユーモア満載のわかりやすい文章で一気に読ませてしまう。
こんな本は、恐らく他には無いだろう。

当然のことながら、鳥と鳥類学に関する情報を多くを知ることができる。

老婦人に舌を切除されるひ弱なスズメでさえ、時には500km以上を移動する。これも飛翔能力ゆえだ。のぞみなら2時間半の日帰り旅行と甘く見てはならない。そもそも、スズメの体重はわずか20gだ。約3千倍の体重を持つ私に換算すると、150万kmの大移動である。月まで二往復、弁当代だけでも破産できる距離だ。

といった鳥に関する知識から、

おそらく、一般に名前が知られている鳥類学者は、ジェームズ・ボンドくらいであろう。英国秘密情報部勤務に同姓同名がいるが、彼の名は実在の鳥類学者から命名されたのだ。
隠密であるスパイに知名度で負けているというのは、実に由々しき事態である。スパイが有名ということも、英国秘密情報部としては由々しき事態である。

のような鳥類学者に関する内輪ネタまでが、巧みな例え話とともに次々にたたみかけてくる。
読んでいてやめ時が見つからない。



『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』は紛れもなく本格派のサイエンス本である

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PHOTO: iStock by Getty Images

筆者が、この本を素晴らしいと感じたもう一つの理由は、例え話と比喩のレパートリーの多さである。
ピッコロ大魔王、天空の城ラピュタ、山口百恵、村上春樹、聖飢魔IIから、のび太まで。
次々と有名人やキャラクターが登場し、鳥類学の理解を後押ししてくれる。
あらゆる世代の視聴者(読者)にもれなくヒットすることであろう。これには、子供から大人までに大人気のヒカキンもびっくりである。

「果たしてこんな面白い本を、どんな人が書いたのだろう」
筆者もブログというカタチで文章を書いている立場なので、ここまで面白いと気になるのが著者である。

本の著者は、川上和人氏。
もちろん日本にわずか1200人ほどしかいない、現役バリバリの鳥類学者の中のひとり。
小笠原群島を拠点として、鳥の研究などフィールドワークを重ねている。
趣味はバイクと文房具屋めぐり、そしてバイク好きなのに何故かインドア派だ。

本があまりにユーモアすぎたので、ついつい本の紹介もふざけているような書き方になってしまったが、『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』は紛れもなく本格派のサイエンス本である。

この記事を読んでくださっている方は、日頃よく見かけるカラスの体重をご存知だろうか?
実はカラスの体重は、わずか600gしかない。

鳥が空を飛ぶためには軽量化が不可欠だ。ネコもカラスも似たようなサイズに見えるかもしれないが、前者は約4kg、後者は600gだ。バイクは二輪で支えられる限定的な空間しか持たない。同じ1000ccでも、自動車なら約1t、バイクなら200kgだ。鳥もバイクも軽量化されたコンパクトなボディに、運動に必要な装備を詰め込んでいる。

ドラえもん好きの小学生から、かめはめ波を打てると信じていた30〜40代の大人まで、鳥と鳥類学に少しでも興味が湧いたら、ぜひ本書を読んでいただきたいものである。

SourceNote

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。
川上 和人
新潮社
売り上げランキング: 322

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