書籍レビュー | ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー 第4回(最終回)



書籍レビュー | ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すアップルの天才デザイナー 第4回(最終回)
先日AppleのCDO(チーフデザインオフィサー)にジョナサン・アイブ氏が就任されました。
就任を記念して「書籍 | ジョナサン・アイブ 偉大な製品を生み出すAppleの天才デザイナー」のレビューをお届けしています。
今回は第4回目です。
最後までお付き合いいただきありがとうござます。

iPhone

2003年の末頃から、iPhoneの開発はスタートします。

マルチタッチについての検証がなされたり、iPodに電話機能を備えようとしてみたりと、様々なことが試されます。
当初iPhoneの案はP1とP2と2案あり、現在のiPhoneはP2案として検討されていました。

2005年のWWDCでダイヤルのついたiPodの画像を冗談ぽく披露していますが、あれがP1案だったのであちらが採用されていれば今のiPhoneとアップルは無かったかもしてません。

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P2案の開発が本格化してくると、ジョニーはデザイン責任者となります。
(同じタイミングで、OS X開発者のフォーストール氏はiOS開発の責任者となります)
ともにお互いの開発者状況を見ることはできなかったそうです。

開発は極秘裏に進められています。
開発のフロアに入るためには、許可を持った人間でさえ4回も社員証を通さないといけないほどセキュリティが厳しかったそうです。

外観の課題やタッチディスプレイの問題などを解決しながら、ジョニーとデザインチームは開発を進めていきます。
開発が進むなか、ジョニーのデザインチームはスクリーンの素材に疑問を持ち始めます。

それまで飛散防止などを理由に、iPhoneのプロトタイプはすべてプラスティック製のスクリーンが使用されていました。

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違和感が拭えなかったジョニーは、思い切ってガラスを試してみることにしました。
試行錯誤の末行き着いたのが、現在のゴリラガラスで有名なコーニング社です。

独自の化学処理が施されたこの強化ガラスは、1960-70年代に開発されましたがほとんど売れず販売が中止されていました。

AppleがiPhoneを開発するタイミングと、コーニング社がゴリラガラスを復活させたいタイミングが重なります。
落下やデザインの問題を解決しゴリラガラスはiPhoneに採用されることになります。
(ちなみに現在のiPhone6には、ゴリラガラス3が採用されています)

「ゴリラガラス4」は他社製強化ガラス比2倍の強さ、スマホを落とした際の耐衝撃性・耐摩耗性を激しく強化
「ゴリラガラス4」は他社製強化ガラス比2倍の強さ、スマホを落とした際の耐衝撃性・耐摩耗性を激しく強化 多くのスマートフォンのディスプレイに採用されて耐久性・傷耐性で高い評価を受けているコーニングのゴリラガラス。
スマートフォン強化ガラスの代名詞となっているゴリラガラスが2年ぶりに新モデル「Gorilla Glass 4(ゴリラガラス4)」として正式に発表されました。
新型ゴリラガラスは一体どこがどのように進化しているのでしょうか。
Gigazineより引用

その後もiPhoneの開発は何度も壁にぶつかります。

「通話はしょっちゅう切れる 」
「充電は満タン前に止まる 」
「アプリはすぐにクラッシュする 」

問題を挙げたらキリがありませんでした。

iPhoneに関わる全員が本当にボロボロになっていました。
「基本的な問題を解決できず、iPhone自体を棚上げする直前だった」とジョニーは語ります。

しかしWWDCの数週間前、発売を予定していたキャリアであるAT&Tに見せられる程度に機能する試作品が出来上がります。
「iPhoneはこれまで見た中で最高のデバイスだ」と、CEOのスタン・シグマンは興奮したそうです。

2007年夏の発売以降、皆さんがご存知の通りiPhoneは大ヒットします。
ジョブスが言ったように「世界がほんの少し良い方に変わり始める」のです。

2007年の年末までに370万台が発売されます。
2008年初めにはMacシリーズの過去の販売台数を超えてしまいます。
2008年の終わりには、Macシリーズの3倍の売上を記録、まさに天井知らずの勢いで伸び続けます。



iPad

ジョニーのチームが秘密裏にiPadに取り組む一方、ジョブスはタブレットの開発は行わないと語ります。
しかしこれはカモフラージュでした。

むしろジョニー達は、iPhoneの開発中からタブレットに取り組んでいたそうです。

iPadのアイディアが以前からあったにも関わらず、製品化できなかったのはテクノロジーが追いついていなかったことが大きな理由でした。
しかしiPhoneの発表以降センサー、スクリーン、バッテリー技術などモバイル周りのテクノロジーは飛躍的に進化を始めます。

2007-2010年にかけては、次世代のiPhoneとiPadの開発が並行して進んでいきます。
ジョニーはiPadの背面素材の選定(iPhone3GSのような強化プラスチックかアルミニウムか)に悩みます。
試行錯誤の末、背面はアルミニウムに決まります。

「ものすごい試行錯誤の連続だった。でも結局はありのままでなければならないことに気付いたんだ。既存の家電製品に惑わされない独自の形状、一番プレーンなものを目指した」と
デザインチームのコアメンバー、クリス・ストリンガーは語りました。

2010年1月27日。
スティーブジョブスはiPadを発表、同年4月に販売が開始されます。
発売後一月を待たずして100万台を達成、1年後の2011年6月までに2500万台に達します。

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iPadは、その後も後継機を発表し続けます。
1年も経たないで発売されたiPad2は、カメラが備えているにも関わらず驚くほど薄くなりました。
2012年にはRetinaディスプレイを搭載し、同年10月にはライトニングコネクタを搭載した4世代目のiPadが発売されます。

ジョニーはデザインチームの仕事を誇りに感じ賞賛を送ります。
「カテゴリーそのものを作り上げ、しかもこれほどの短期間にそれを完全に塗り替えるようなプロダクトはこれまでになかった」



スティーブ・ジョブズ

2011年8月24日。
Appleは、ジョブスがCEOを退任し取締役会長として残ることを発表します。
現在のCEOでもあるティムクックが、正式に経営の指揮を執ることになります。

この際ジョニーが後継者となるべきだ、との報道も多くなされました。
(クックと違ってジョニーは有名でしたので)
しかし本格的なAppleのジャーナリスト達の中に、ジョニーが時期CEOになることを予測している人はほとんどいませんでした。

なぜならAppleの経営面に対して、ジョニーは全く興味がなかったからです。
「僕の望みはただデザインし、ものを作ること。それだけだ」インタビューでもそう語っています。

2011年10月5日。
退任発表から僅か1ヶ月でスティーブジョブスがこの世を去ります。
ジョブスの死の3週間後、追悼式でジョニーは8分間のスピーチを行います。

ジョニーの弔辞は笑い話で始まり、「忠実な友人」ジョブスとの印象的なエピソードがところどころに散りばめらてた素晴らしいスピーチでした。
最後の言葉は特に印象がつよく、ジョニーらしさにあふれています。
「ありがとうスティーブ。偉大なビジョンを持ってここにいる優秀なメンバーをまとめあげひとつにしてくれたこと、あなたから学んだ全てのことに、そしてこれからもお互いから学んでいくすべてのことに。ありがとうスティーブ」
独自の語り口と、優しい声のスピーチは今でも脳裏に焼き付いています。

替えの効かない唯一無二のデザイナー

ジョブスが亡くなったあとも、Appleは順調に業績を伸ばしていきます。
Appleの株価は世界一の時価総額を誇るエクソンモービルをしのぐまでになりました。

2012年。
ジョニーはデザインとビジネスへの貢献を認めらて、イギリス女王陛下の新年叙勲者リスト入りし二等勲士の称号を授与されます。

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同年10月29日には、アップルは突如経営陣の入れ替えを発表します。
iOSの責任者だったスコット・フォーストールが退社し、ジョニーがクリエイティブ部門全体を統括することのなります。

これはジョニーが主要製品すべてにおいて、ハードとソフト両方の責任者になることを意味しています。
ジョニーがハードとソフト両面の責任者となることで、それ以降のAppleプロダクトは益々統一感を持ち始めます。

iOS7以降は、フォーストールの好んだ現実模倣的なデザインはほとんど廃止され、装飾の取り除かれた上質なデザインへと移行します。

十数年前、倒産の寸前だったAppleはスティーブジョブスの復活とともに世界一の企業へと登りつめました。

ジョブスの功績ばかりにフォーカスされがちですが、復活の気かけになったiMacやAppleを世界一の企業に押し上げたiPhoneのデザインはジョニーがいなければ決して実現していなかったでしょう。

ジョニーは「世界をどうみるかがどんなデザイナーになるかを決めるんだ。何を見ても、どうしてなんだ?、どうしてこうなってるんだ?どうしてああなってるんだ?と考えてしまうのがこの仕事の悩ましいところだ」と楽しそうに言っています。

常にデザインをし続けている。そんなジョニーはこれからも世界に対して「なぜ?」を問い続け新しいデザイン新しいプロダクト、そして誰も味わったことのない驚きを生み出していってくれると思います。

わたしは1人のアップルファンとして、ジョニーとデザインチームが今後Appleとともに歩む道を応援し見守り続けていくつもりです。

最後にジョニーの言葉を借りて、ブックレビューを結びたいと思います。

「デザイナーのくせにこんなことを言うのはおかしいが、デザイナーがこれみよがしにしっぽを振っているような製品を目にすると、いやになるよ。 僕の目標は、シンプルなもの持ち主が思い通りにできるものを創ることだ。
デザイナー正しい仕事をすれば、ユーザーは対象に近づき、より没頭するようになるよ」
Jony Ive,

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